新規就農者を取り巻く環境と支援体制について

食糧自給率の向上や農業に関わる人材育成は、我が国における重要課題のひとつとされています。そのため、日本では国や自治体などから農業経営に役立つ数々のサポートを受けることが可能です。すでに農業を経営している人を支援する制度はもちろんのこと、補助金を受け取りながら農業が学べるシステムや、就農時に奨励金や助成金を受け取れる制度なども用意されています。ここでは、新しく農業を始める新規就農者にスポットを当てて解説していきます。

農業の支援情報の写真 新規就農者の現状

もともと農業従事者の数の減少は我が国の問題点でしたが、そこに社会全体の高齢化が加わったことで、農業生産の基盤維持はますます優先度の高い懸念事項となりました。そのため、農業に新たに携わろうとする新規就農者へと注目が集まっています。農林水産省による新規就農者の定義は「新規自営農業就農者」「新規雇用就農者」「新規参入者」の3つの概念を合わせたものとなっています。「新規自営農業就農者」とは、家族経営の農家に生まれ、身分が学生から自営農業従事者に変わった新規学卒就農者、及びほかの仕事をしていて自営農業従事者に転職した離職就農者を指します。「新規雇用就農者」とは、新しく法人などに常雇い(年間7カ月以上)として雇用されて就農した人のことです。「新規参入者」とは、土地や資金などを自ら調達して(贈与や相続などによって親の農地を譲渡された場合は含みません)、新しく農業経営を始めた責任者、及び共同経営者のこととなります。こうした概念を持つ新規就農者の数は増加傾向にあり、農林水産省の調査によれば平成25年度に5万810人、平成26年度に5万7650人、平成27年度に6万5030人が新たに就農しています。
参照元:http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001172223

農業の支援情報の写真 新規就農者を取り巻く問題

新規就農者が経営面や生活面で感じている問題や課題に関して、全国農業会議所が「新規就農者の就農実態に関する調査結果」という資料のなかでアンケート調査を行っています。その平成28年度版の調査結果(複数回答)によれば、「所得が少ない」55.9パーセント、「技術の未熟さ」45.6パーセント、「設備投資資金の不足」32.8パーセント、「労働力不足」29.6パーセント、「運転資金の不足」24.3パーセントなどとなっています。こうした問題に対処するためには、給付金を受け取りながら農業を学べる期間に可能な限り技術を習得しておくことや、安価で効率的な設備投資を徹底すること、広い人脈や有力な情報を確保することなどが重要となるでしょう。そして、新規就農とはつまり起業して経営者になるということですから、農業をビジネスと捉え、しっかりとした経営計画を練ることがポイントだといえます。経営ノウハウがわからないうちは高い技術レベルが要求される農法や品種の栽培などには手を出さず、リスクの低い経営を心がけて地道に経験を積むことも、場合によっては必要となるでしょう。
参照元:https://www.nca.or.jp/Be-farmer/statistics/pdf/OChagC5X8b3V3NsIcbsm201704071333.pdf

段階別の支援方法

・募集段階
農林水産省や全国農業会議所、農業協同組合(JA)をはじめとした農業関連のウェブサイトやホームページ上での情報提供、店舗窓口でのパンフレット配布、就農に関する各地での相談会などを参考にしてもらい、新規就農希望者を募集します。応募受付の際は面談などによって新規就農希望者のニーズをよく把握し、それぞれが望む就農に向けて適切な準備をサポートします。
・研修段階
新規就農希望者の研修は、農業協同組合や農業生産法人、一般農家などが協力して行います。農業技術や経営管理などについて、カリキュラムに沿って研修を実施します。「農業次世代人材投資事業」や「農の雇用事業」などの支援制度を受けることもできます。
・就農段階
就農に当たり、農地の斡旋や販売ルートの確保、適切な設備投資や経営計画など、さまざまな準備が必要となります。そうした取り組みに臨む際、農業協同組合の営農指導員や新規就農相談センターの職員などに相談することでサポートが受けられるでしょう。また、「新規就農者に対する無利子資金制度」や「経営体育成支援事業」などといった支援制度の利用も有効です。