みかん農家のリアル。収入、作業時間、取り組みを紹介

冬場に欠かせない果物であるみかん。みかんといえば静岡や愛媛が有名ですが、みかん畑は傾斜地に作られることが多いので最近では作る人も少なくなっています。これまで農業は実家が農家でなければ参入が難しかったのですが、後継者のいないみかん畑では親族外で後継者を探す動きが出ています。 新規就農で田舎暮らしを考えている人は、みかん農家の収入や作業に必要な時間を知ることによって、みかん農家になるという選択肢を加えてみてはいかがでしょうか。

農業・農家の収入について繁忙期と閑散期がはっきりしている、みかん栽培

みかん農家が1000平米の農地でみかんを栽培するには、年間で200時間程度かかります。米が年間で30時間であるのに比べると多いように思えますが、1カ月あたりにすると20時間にも満たない作業時間です。温州みかんの場合、作業が多い繁忙月は収穫期の10月から12月で、忙しい時期と比較的手があいている時期とがはっきりしています。 米は、平地で作るため機械化が可能ですが、みかん畑は山の傾斜地にあることが多く、機械を導入することが困難です。そのため、実の間引き作業である摘果や収穫作業は、手作業で行います。みかん農家の作業は春先に剪定、花が咲いたら摘花、実がついたら摘果、季節ごとの農薬散布と除草、収穫と出荷が主な内容です。最近は、甘いみかんを作るために渇水のとき以外は水やりをしない農法をとりいれている農家や、地面にビニールを敷いて雨が地面に染みこまないようにしているところもあります。野菜や他の果物にも共通することですが、水分があると実は大きくなるものの、味がぼやけてしまうのです。また、比較的規模の大きな農家では、園地を平らにしたり、畑の中に道をつくったりして作業効率を高める工夫をしている農家もあります。

農業・農家の収入についてみかん農家の収入は生産量と価格で決まる

農家の収入は、農産物のその年の生産量と価格によって決まります。価格は需給バランスで決まるものですが、生産量は天候や気温、鳥獣の被害など農家がコントロールできないものの影響を受けやすいです。 さらに、みかんに限らず果樹一般について共通することとして、豊作の年の翌年は裏作になり収量が減ってしまう隔年結果という現象があります。みかん農家は小規模のところが多く、売上高では500万円弱、農薬や人件費などの経費を差し引いた後の所得は250万円程度です。戦後まもなくの頃、みかんは儲かる品目でしたが、70年代に入って供給過剰になったため、価格が低下し今も決して収益性の高い品目ではありません。 収入を増やすために、みかん農家は様々な努力をしています。資材や農薬、人件費の節約をして経費を減らすことは経営努力の一つです。経費の中でもっとも割合が高いのは、人件費です。普段は一人または家族だけで運営しているみかん農家でも、繁忙期はアルバイトを雇って収穫するところが多くあります。この時期は天候を見ながら一気に収穫してしまわないといけないのでとにかく人手が必要になります。

収益率は自分で決める!これからのみかん農家のあり方

新しい品種を導入したり、栽培方法を工夫したりしておいしいみかんを作ることも収益率アップにつながります。甘さと酸味の絶妙なバランスを作り出すために、水はけのよい土づくりをするのはその一環です。農薬を減らして栽培する減農薬や無農薬栽培などに取り組んで、消費者に栽培方法そのものに価値を感じてもらうことも大切です。 収益率アップには売り先も重要になります。長年、日本の農業は農協が主導してきました。売り先の大部分が農協という農家は多いものです。しかし、農協に頼りきりで販路を自ら開拓しない農家の収入は頭打ちといわれています。儲かる農家になるためには農協とうまく付き合いつつも、小売店や仲卸業者などの開拓、個人への直販など多様な販路を開拓していくことが必要です。 栽培品種に関しても、温州みかんだけでなく、単価の高い柑橘類を取り入れていくなど、戦略的に考えることが欠かせなくなってくるでしょう。一次産品を売るだけでなく、加工品も手がけるなどして、生産から販売までの6次化を実現していくことも収入増加につながります。様々な試行錯誤をすることで、収入アップが実現できます。農業はやり方次第で、儲かる農家にも、儲からない農家にもなりうるのです。