始める前に知っておきたい!農業の準備資金はいくら必要?

 

挿絵1田舎暮らしがしたい、安全で安心な野菜が作りたいなど、農業を始める理由は人それぞれです。就農にあたっては農業もほかの業種の自営業と同じで、ある程度まとまった資金が必要。ただ、初めて就農する方々にとっては、どのくらいの資金を用意すれば良いのか、戸惑うことも多いでしょう。そこで今回は、農業を始めるにあたり、いくらくらい資金が必要になるのか解説します。育てる農作物によっても変わりますので、自分の将来設計と照らし合わせて考えてみましょう。

農家になるにはいくら必要?

グラフ就農するには実際にどのくらいの資金が必要になると思うか、100名の皆さんにアンケートを取りました。

【質問】
農業を始めるための資金はいくらくらい必要だと思いますか?
【回答結果】
回答 回答数
1000万円以上 36
500万円 33
100万円 31

調査地域:全国
調査対象:年齢不問・男女
調査期間:2017年08月02日~2017年08月09日
有効回答数:100サンプル

規模によってかかる資金はまちまち?

一番多い回答は1000万円以上でしたが、どの回答も数に大きな差は見られませんでした。それぞれの回答コメントを見ていきましょう。

1000万円以上
  1. トラクター、タネ、肥料など、職業レベルで農業をしようと思ったら必要なものはたくさんあると思う。量も必要だし、このぐらいかかるのでは。(20代/学生/女性)

農業をするには機材をはじめ、たくさんの資材も必要です。多めに見積もっておきたいという気持ちがあるのかもしれません。

500万円
  1. 土地と農機具、肥料や種など、規模にもよるけど初期費用はこれぐらい必要なのでは。(50代/専業主婦(主夫)/男性)

1000万円もかからないとしても、やはり機材と資材にかかる費用について心配する気持ちが強いことがわかります。

100万円
  1. 規模にもよるでしょうが、今は農家のなり手が少ないこともあって市町村単位で土地や家を貸してくれたり格安で購入できたり、初期費用を抑えて参入できるような行政のサービスも増えていると聞きます。資金はあまりなくてもやる気さえあれば始められるのではないでしょうか。(40代/正社員/男性)

たしかに、各自治体で就農を支援する動きが見られますから、100万円でもはじめられるかもという考えにも頷けますね。

どの回答でも「規模によってかかる資金は変わる」というのが共通認識であることがわかりました。いずれにしても就農するためにはある程度まとまった資金が必要だと考える人がほとんどのようですね。

農作物別に見てみよう!用意した準備資金の平均

挿絵2全国新規就農相談センターの経営シミュレーションによると新規就農のための準備資金平均額は、水稲で625.8万円、施設野菜で528.5万円、果樹で509.3万円となっています。全作目の準備資金平均額が488.7万円ですので、今回挙げた3作目はいずれも全作目平均よりも高く、水稲に関しては137.1万円も高い金額です。土地以外の機械や施設を取得するのに必要な金額の平均は、水稲で432.7 万円、施設野菜で795.3 万円、果樹で367.5 万円です。もっともお金がかかっているのが施設野菜で、準備資金の528.5万円を266.8万円も超えていることになります。施設野菜はハウスや冷暖房などの設備が必要になるため、水稲や果樹と比べるとどうしても取得費用は高くなる傾向にあります。ちなみに水稲では田植え機やトラクター、コンバイン、果樹ではトラクターや運搬車、作目を問わずに草刈機や軽トラックなどが、就農にあたりそろえておきたい機械です。全作目で機械や施設を取得する際にかかった平均額は561.8万円となっています。水稲と果樹は全作目平均よりも比較的安い金額で機械や施設を用意することが可能です。ただ、機械や施設にはかけようと思えばいくらでも費用をかけることができます。しかし就農したばかりの頃は農作物をうまく育てることができず、経営がうまく回らない可能性もあります。離農者から安く機械を購入したり、中古が出回っていないか調べたりして節約を心がけたいところです。

気になる農業の運用費用

挿絵3就農すると当然、運用費用がかかります。就農1年目でかかった運用費用の平均を見てみると、水稲では100.7万円、施設野菜で184.6万円、果樹で120.5万円です。全作目平均は159.7万円ですので、水稲と果樹は全作目平均よりも運用費用が安いのに対し、施設野菜は運用でもお金がかかることがわかります。農作物を育てるための必要経費は、肥料や農薬、種苗、機械を動かすための燃料などで、これらは農業を営んでいる間は必ずかかります。施設野菜がほかの作目より高いのは温度・湿度管理が必要になるからで、ランニングコストをいかに安くするかで運用費用が変わってきます。就農1年目ならビニールハウスの組立費用がかかるでしょうし、ビニールハウスが劣化すればそれにともなう貼り替えも必要です。水稲や果樹栽培よりも天候の影響を受けにくいのが施設野菜のメリットですが、コストやメンテナンスの手間がかかる分、運用費用も高くなってしまうのがデメリットです。水稲や果樹のメリットとデメリットは施設野菜の逆になりますので、自分がやりたい農業だとどのくらいの運用費用がかかるのか、その内どのような点で節約できるのかなどを事前に調べておくと、農業経営の役に立つのではないでしょうか。

農家として独り立ちするまでにかかる期間

農家として独り立ちできるようになるには、ある程度年数がかかる場合がほとんどです。特に就農1年目は農作物が育たなかったり虫害や作物の病気などにうまく対応できなかったりして、思うような売上が立たない可能性があります。新規就農1年目の全作目平均売上金額は265.3万円、水稲で270万円、施設野菜で489.7万円、果樹で192.4万円です。水稲や果樹と比べて施設野菜はかなり売上が立っていますが、就農1年目の運用費用や機械・施設取得費用と比べると、その売上は十分とは言えません。機械や施設を購入するための準備資金とは別に、収入が少なくても最低1年は暮らしていけるくらいの生活費を用意しておきたいところです。生活費として用意した準備資金の全作目平均額は265.3万円です。どの土地に住むのかによっても変わりますが、できれば2年から3年分の生活費を用意できると、精神的にも余裕が出てくるでしょう。一般的に経営が軌道に乗るまでには3年ほどかかると言われています。自治体の補助金が出るのが最長で5年ですので、経営を安定させるまでに長くても5年を目処にしたいところです。

まとめ

農業を始めるにはさまざまなハードルがありますが、資金をどのくらい準備できるかもそのひとつです。準備資金は潤沢な方が、農地の規模を広げたりいろいろな機械や設備を導入したりできます。しかし職業としての農業に慣れないうちは、あまり手を広げすぎると農作物を管理しきれない可能性があります。まずは自分が何をどこで作りたいのかを考え、必要最低限の規模で始めるのもひとつの方法。準備資金も少なくてすみますし、農作物の栽培や経営に関してのトラブルがあった場合も、対処しやすいでしょう。
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※費用のシミュレーション参考URL
全国新規就農相談センター、「経営シミュレーション」
https://www.nca.or.jp/Be-farmer/management_sim/index.php