県内唯一の繁殖農家としての新規就農!新規就農までの経緯とは

profile

名前
横田 健一
出身
福島県南相馬市
年齢
45歳

県内唯一の繁殖農家としての新規就農者!

山形県川西町にて、就農して7年目の和牛繁殖農家の横田 健一さん。山形県で唯一、家業を相続した農家ではなく、新規就農で就農した繁殖和牛農家だ。2014年に新規就農し、2019年の「第21回おきたま畜産共進会」では、出品した牛が最優秀賞を獲得し、2020年には認定農業者へとなった。就農7年目の今では事業の安定にも成功している。経緯だけを聞くと順調に見えるキャリアも、様々な背景・苦労があった上での決断と地域の支えによるものだった。

 

サラリーマン時代からの農業への夢と、突然の環境の変化

横田さんの出身地は福島県南相馬市で、当時はサラリーマンとして働いていた。本業に従事しつつも、従兄弟が肉牛農家を営んでおり、昔から手伝いをしていた。横田さんは牧場を手伝いながら、「生き物が好きで、いつかは脱サラして農業をやるのもいいな」と考えるようになったと語ります。しかし2011年3月11日に東日本大震災が起こり、福島県南相馬市から山形県川西町に奥さんと当時小学生のお子さんと共に家族一同で避難することとなった。

 

新しい「道」

地元が復興へと向かう中、横田さんは地元に戻るかこのまま川西町に移住するのかを選択せざるを得なかった。その中で、2つの理由から横田さんは川西町で住んでいくことを決断することとなった。1つは3人のお子さんがとても地域に馴染んでいたこと。冬は大変ではあるものの、川西町では地域のお祭りの風習が残っており、移住してきた横田さんご家族も参加しやすい雰囲気で、気づけばみんなが地域を好きになっていた。もう1つの理由は、川西町役場の方で過去に肥育牧場の手伝いをした経験があり、自身もいつかは農家になる夢があることを話した際に、「牛飼いを目指すなら応援するから」と背中を押されたからだ。震災後初めて参加した、山形のブランド牛『米沢牛』の枝肉市場では、当時放射能の風評被害で肉牛の価格が下がる中、米沢牛は桁外れの人気を保っており、和牛の良さを再確認した横田さんはまだ南相馬市に戻りにくい状況であれば、覚悟を決めて仔牛の出荷が県内一の川西町で畜産をやろうと決めた。

 

新規就農に向けた準備期間

当時の役場職員の勧めもあり、臨時職員として働きながら就農への準備をコツコツと開始。研修を受けて勉強をしつつ、3年ほど職員として仕事をしながらも土地を探し、準備期間を1年経て新規就農をした。元々従兄弟の肥育農家を手伝っていたが繁殖はやった経験がなく、田んぼも地元の南相馬とは勝手が違うため、自分で学ぶ必要があった。横田さんは休みの日に地域の繁殖牧場を手伝いつつ、繁殖や川西町で田んぼの知識をつけていった。就農に向けて牛舎は2つ用意したそうだが、最初の1つは地域の農家さんとの繋がりで貸していただけることとなった。元の持ち主から牛舎と農地をセットで借りて欲しいと頼まれたこともあって、稲発酵粗飼料(WCS)を自給飼料として生産しつつ、牛と飼料生産を始めた。

 

失敗しつつも、少しずつ経営の安定へ

横田さんは事業開始当時のことを振り返り、「奥さんを納得させるのが大変でした。お金を借りる前に収支をシミュレーションするものの、実際はやってみないとわかりません。当時は子供も高校進学を控えたお金が必要な時期で、初期投資も少なくはありませんでした。当時はただがむしゃらで、就農後も良かったことよりも大変なことばかり。最初は仔牛がよく育たなかったり、田んぼがダメになってしまったり、受胎率が低かったりと思うようにいかないことばかりでした。ただ、途方もない苦労はあるものの、牧草の収穫量が良かったり、WCSのできが良かったり、牛が高く売れたりと目に見える結果も得られます。他にもベテラン母牛の仔牛の育て方を見ていると、自分自身が牛に育て方を教えてもらうようになるなど面白いこともあります。何よりも昔からの夢に向かって仕事ができたので、辞めようと思うことはありませんでした。今になってみるとやはりやってみて良かったと思います。」と語っていた。

 

周りの支えがあってこそできる新規就農という「道」

横田さんに畜産業界で新規就農をするという難しい挑戦の中で、成功するための秘訣を聞くと、「自分がやっていることが全てなので、秘訣という特別なものはありません。モットーは手をかけること・手を抜かないことで、毎日の積み重ねが大事。あとは運ですね。」とお話ししてくれた。川西町では、トラクター組合やWCSの組織があり、そこでは安く機械やオペレーターを借りることができた。前述の牛舎と農地を譲り受けたこと含め、川西町では地域で支え合う文化が根付いている。

 

横田さんのこれからと、新規就農を目指す方へのアドバイス

「まだ現状で手一杯だけど、いつかは肥育も自分で行い、繁殖から肥育・飼料作成まで一貫してやっていきたい。まずは経営を安定化させて人を集め、地域の担い手を増やしていくのが理想です。」と、高齢化が進む地域を支える『地域の担い手』も視野に入れていた。

これから畜産業界で新規就農を始める方へのアドバイスを伺った。「まずは生き物が好きであることは必須条件。基本にこれがないと仕事に向き合うことは難しいです。牛を見たことがある、触ったことがあるだけでは実際に働いてみるとギャップを感じ、現場では汚いところを避けて通ることができない場面も訪れます。まずはインターンや数日の農業体験、可能であれば農協などで働いてみて、地域の農家さんと深く関わっていき、仕事にしなければ触れる機会がない畜産に触れてみる・やってみることが大切。その次に大切なのは、いろんな農家さんとのネットワーク。1人で仕事をするだけでは辛いので、近くに相談ができる仲間がいることが重要となります。畜産の仕事をする上で困ったときは、周りの農家同士が支え合えるからやっていくことができていると思っています。最後に、新規就農をする場合はある程度の自己資金の用意はしてください。国や地域の支援制度、地域の農家組合で機械類を借りることで必要な資材が準備できます。支援制度を活用しつつ地域のネットワークの助け合いの文化の中で、覚悟を持ってやっていくことが大事です。」と、新規就農へのアドバイスを教えてくれた。

 

★本記事については、山形おきたま農業協同組合 営農経済部 営農企画課までお問合せください★

 

企業情報

地域 山形県
所在地(住所)

〒999-0121
山形県東置賜郡川西町大字上小松978-1

会社名

山形おきたま農業協同組合
営農経済部 営農企画課

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0238-46-5300